冷房機器使用時の換気

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冷房使用中も換気が必要になることがある

換気という言葉を聞くと、「冬に暖房をつけている時にはこまめに換気しないといけない」と連想される方は多いでしょう。しかし、暖房使用中だけでなく、冷房使用中の夏の季節でも、換気が必要となる場面があります。

冷房使用中に換気を行う目的

石油ストーブや石油ファンヒーターなどの「燃焼式暖房器具」で、屋内に排気するものを利用する際は、一酸化炭素中毒対策として、1時間に一度以上の換気が必要です。

 

しかし、エアコンなどの冷房器具はそもそも燃焼しませんので、一酸化炭素を発生させません。よって、換気を行わなくても命の危険がある状況にはなりません。また、2003年7月以後に着工された建物や、ほとんどの商業施設・オフィスビルでは24時間換気が動作しています。このため、特に意識しなくても、「2時間に一度は建物内の空気が全て入れ替わる」程度の換気は行われています。


ただ、短時間で換気を行うために、他の換気方法と併用したほうがよい場面もあります。具体的には以下のような対策を行いたい場合です。

(1)ウイルス対策

2020年の新型コロナウイルス流行により、換気の重要性が増しています。厚生労働省によると、熱中症対策として冷房している屋内であっても「3密(密集、密接、密閉)」を避ける等の対策として、窓開けや換気扇による「換気を行う必要がある」と強い表現で記載されています。


出典: 厚生労働省 「新しい生活様式」 における熱中症予防行動のポイント

(2)二酸化炭素対策

屋内空間で人が「息を吸って吐く」を繰り返すことで、徐々に二酸化炭素濃度が上がってきます。建築基準法が定める二酸化炭素濃度基準は「1000ppm以下」ですが、濃度が上がると「思考力の低下」や「呼吸回数の増加」が起こります。

 

一般的な家庭で二酸化炭素中毒で生命が危険になることはないとはいえ、特に濃度が上がった場合は換気による対策が必要です。

(3)アレルゲン対策

ほこり、食べ物のくず、衣類繊維くず、ダニやその死骸、土の粉塵、ペットの毛、花粉など、微細で舞い上がりやすく、吸い込んでしまうとアレルギー症状が出るものを総称して「アレルゲン」と呼びます。

 

掃除機をかける、拭き掃除をするといった対策、そして24時間換気の実施も有効な対策です。しかし、これらの対策に加えて、冷房器具を使用する季節であっても、窓開けや換気扇、天井ファンなどで空気を入れ替えるのは有効な対策です。

 

なお、スギやヒノキ花粉は春がピークですが、梅雨の時期から夏まで飛散することもあります。また、イネの花粉は夏の間も飛散を続けますので、これらの花粉でアレルギー症状を出している家族がいる場合は、「花粉が屋内に入り込んでしまう」窓開け以外の方法で換気すべきです。

(4)シックハウス症候群対策

シックハウス症候群は、家の中の建材や家具から放出される物質が原因となるため、季節を問わず発症します。シックハウス症候群の原因物質を根本的になくすことは難しいため、「建材・家具等からの放出が少なくなるまで、できるだけ屋内のシックハウス物質(揮発性有機化合物、VOC)を外に出す」ことが対策となります。


冷房機器使用中であっても、24時間換気に加え、窓開けや換気扇・天井ファンなどの使用が有効です。また、空気清浄機の方式によっては、VOC低減に有効な製品もあります。


参考: シックハウス対策の換気について理解する

(5)ニオイ対策

冷房機器を利用する季節は多湿です。例えば、東京都を例にとると、梅雨の季節である6月から残暑が残る9月までの湿度は平均で77-86%です。

 

出典: 気象庁 過去の気象データ (東京 2018年)

 

このため、屋内に湿気や、湿気を原因とするカビによるニオイがこもりがちになります。こまめにカビや水回りの掃除を行ったり、除湿機を利用したりしてもニオイがゼロになるわけではありません。このため、24時間換気と別な換気方法を併用して、ニオイを減らすのが有効です。

冷房使用中に換気を行う注意点

冷房使用中であっても、換気を行う方法は変わりません。基本は「24時間換気と他の換気方法の併用」です。

 

24時間換気の換気スピードは「2時間で空気が全て入れ替わる」ですが、他の方法を併用すると「より短時間で空気が入れ替わる」「24時間換気が行き渡りにくい場所の対策が行える」というメリットがあります。

 

ここでは、冷房使用中に換気を行う際、特に注意すべき点をお伝えします。

室温の上昇を防ぎながら換気する

窓を開けると、大量の外気が屋内に入ってきます(給気されます)。これにより、屋内の空気が押し出されて排気が進み、結果短時間で空気が入れ替わるというメリットがあります。

 

しかし、暑さが厳しいときに窓を開けて換気を行うと、熱い空気が大量に入ってくるため、室温が急上昇します。長い時間窓を開けたままにすると、室温がすっかり上昇してしまい、体調不良や熱中症につながります。また、室内の冷えていた空気が熱くなるため、再びエアコンがフル稼働しなければならなくなり、電気料金も高くなります。

 

これを防ぐために重要なのは、「換気扇や排気ファンを活用すること」「窓開けを行う際は冷房効率を損ねないように短時間とすること」「冷房を止めないこと」です。

 

まず、換気扇や排気ファンを使うと、冷房で冷やされた冷たい空気が外に出ていくため、室温は若干上昇する場合があります。しかし、冷房を強めることで温度上昇を最小限に食い止めることができます。また、換気扇や排気ファンは「排気のみ行う」ため、外気を室内に入れません。このため、外の熱い空気が直接屋内に入ることによる、室温の急上昇を防げます。

 

換気機能つきエアコンも有効です。24時間換気は2時間で空気が完全に入れ替わることが想定されていますが、換気機能付きエアコンを利用すると、窓を開けずに24時間換気と同程度、またはそれ以上の換気を追加で行えるため、冷房効率を下げずに換気効率を一気に高くできます。

 

どうしても窓開けが必要となる場合は、窓開け換気を行いましょう。しかし、室温が急上昇するため、1回あたりの窓開け時間は数分程度とすべきでしょう。

 

また、換気中であっても冷房を止めてはいけません。冷房を止めると、室温の上昇に拍車がかかり、快適な室温まで下がるのに時間がかかります。

二酸化炭素濃度を測定する

冷房中の換気を正しく行うためには、「換気をすべきタイミング」を知ることが重要です。このタイミングを教えてくれるのが二酸化炭素濃度の測定器(センサー)です。

 

「何時間に一度換気する」と決めていても、実際には換気が足りていなかったり、または換気が不要なタイミングに無駄に換気してしまっていたりする場合があります。二酸化炭素濃度を知ることができれば、無駄な換気を行わなくてもよく、濃度計を見ながら必要なタイミングに最小限の換気を行えます(これは冷房機器使用中だけでなく、他の季節でも有効です)。

 

ここで「なぜ二酸化炭素濃度なのか。他の物質も測定したほうが良いのではないか」とお考えになる方もいるかと思います。

 

もっとも大きな理由は、「人がいれば必ず発生する物質は二酸化炭素のみである」ことにあります。

 

俗に言う「この部屋は空気が悪い」とは、実際には屋外と比べて二酸化炭素濃度が高い状態を指し、これが二酸化炭素濃度により換気タイミングを判断する理由です。

 

VOCや窒素酸化物等も換気により排出したい有害物質なので、これらの物質を測定しても構わないのですが、以下の理由で一般的ではありません。

 

1つめは、数多くの物質を測定する場合、測定対象物質ごとに測定器も多数必要になることです。家庭やオフィスは研究機関ではありませんので、そこまでの対策は過剰です。

 

2つめは、信頼できる測定器があっても高額である場合が多いことです。例えば、シックハウス症候群でお悩みの家庭が、VOC測定器を検討する場合があります。しかし、VOC測定器には「安価だが信頼性が低く、測定値が信頼できない測定器」か、「正確だが非常に高額(低価格なものでも数十万円台前半)な測定器」しかないのが現状です。そこまで高額な測定器を家庭に導入する必要はないと考えます。

 

3つめは、測定できない物質が多数あるためです。例えば、室内に新型コロナウイルスがどれだけ飛散しているかを測定できる測定器はありません。

 

このため各法律においても、換気を行う基準として二酸化炭素濃度が用いられています。別な言い方をすると、「二酸化炭素濃度を1000ppm以下に保つ水準の換気ができていれば、十分な換気が行われている」と推測できるということです。

 

なお、二酸化炭素濃度測定器を検討する際に、どのような基準で選別すればよいかについては別記事を参考にしてください。

 

参考: 換気を行う基準・目安を知る