次に、「換気によって屋外に出せる物質はこれだけあるにも関わらず、なぜ二酸化炭素濃度が統一的に用いられている」のでしょうか。
その大きな理由は、「人がいれば必ず発生する物質」は二酸化炭素のみであるためです。他の物質は人がいるだけでは発生しません。
上記表に記載されている一酸化炭素は、「低濃度であっても死亡リスクがある極めて危険な物質」ですが、屋内でストーブやファンヒーターをつけて「燃焼時に発生する物質が屋内に放出」されない限り、発生することはありません(窒素酸化物も同様です)。
シックハウス症候群を引き起こす物質の多くは、家で用いられている建材に含まれている場合が多いです。しかし、シックハウス症候群を防ぐための建築基準法の段階的な改正により、対象物質の使用または使用量が制限が加えられています。また対象物質があったとしても、シックハウス症候群の症状を出さない人も多いです。つまり、シックハウス症候群は「多くの場所ではそもそも発生していない」「発症したとしても、症状を出さない人が多くいる」ため、広く使われる基準にはできません。
アレルゲンも同様です。特定の物質、または複数の物質に対して強いアレルギーを発症する人もいますが、何も発症しない人も多いです。また、花粉などのように「特定の季節のみ強く発生するが、それ以外の季節ではほぼ発生しない」ものや、ほこりのように「密閉環境ではほぼ発生しない」「きちんと掃除すれば、除去できる」ものもあります。よって、統一的な指標としては使いにくい物となります。
最後に細菌・ウイルスですが、これは一部の機関でしか測定ができないため指標にすることができません。特にウイルスの測定は、大学などの研究機関や、分析を専門的に行っている機関でしか対応できません。
こうした事情により、二酸化炭素(二酸化炭素濃度)が換気の基準として用いられています。