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二酸化炭素濃度と健康 - 換気の時間 | 換気の総合情報サイト

二酸化炭素濃度と健康

この記事の目次

多くの生徒が席を並べる教室での授業中や、大人数が出席する会議の途中で、ふと眠くなってしまった経験はありませんでしょうか。これまで「寝不足」や「気合が足りない」といった言葉で片付けられていたこれらの眠気は、室内の二酸化炭素濃度が問題かもしれません。

二酸化炭素濃度と安全性

二酸化炭素濃度が上昇すると、著しい健康被害や、最悪の場合死亡に至る場合があります。しかし、正しい理解を持てば、二酸化炭素は怖いものではありません。以下で解説します。

二酸化炭素濃度と身体への影

二酸化炭素は大気中に約0.04% (400ppm)含まれ、かつ、私達の吐く息に3.8% (38000ppm) 程度含まれる物質です。「人は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出す」「森林は二酸化炭素を吸収するので大切」といった言葉にある通り、私たちの身の回りに古くから存在しています。

 

二酸化炭素は、低濃度であれば人体に影響を及ぼすことはありません。しかし、濃度が高くなるにつれて、主に呼吸器に症状が出始め、濃度が20% (200000ppm) になると死に至るとされています(致死量)。

吸気中のCO2濃度 症状
0.04% (400pm) 症状なし(大気中の二酸化炭素濃度)
0.1% (1000ppm) 軽い眠気(建築物環境衛生管理基準濃度)
0.15% (1500ppm) うとうと状態、不愉快、ニオイ(学校環境衛生基準)
0.25% (2500ppm) 健康への悪影響
1% (10000ppm) 呼吸数と1回換気量の増加
2% (20000ppm) 数時間の吸入で症状に変化なし
3% (30000ppm) 危険な影響はない、呼吸の深さが増す
4% (40000ppm) 粘膜に刺激、頭部圧迫感、血圧上昇、耳鳴り
6% (60000ppm) 呼吸数が著明に増加、皮膚血管の拡張、悪心
8% (80000ppm) 精神活動の乱れ、呼吸困難が著明
10% (100000ppm) 意識喪失、呼吸困難
20% (200000ppm) 中枢の麻痺、死亡

出典: 科学技術振興機構 

内閣官房 室内CO2 濃度を換気の指標として利用する研究

二酸化炭素濃度は、オフィスや住宅では1000ppm以下、学校や教育機関では1500ppm以下とすべき努力義務があります。ただし、上記表にもある通り、目安の約10倍の数値でも健康への影響はほぼないことから、かなり余裕を持って二酸化炭素濃度の基準が設けられていることがわかります。

 

また、上記表では0.25% (2500ppm) から「健康への悪影響」とありますが、これは実際の健康被害に基づくものでなく、具体的な症状が出てくるわけではありません。

 

深刻な影響が出始めるのは、4% (40000ppm) で、耳鳴りや刺激などの明らかな違和感が現れます。10% (100000ppm) で意識喪失、呼吸困難、20% (200000ppm) で中枢麻痺・死亡となります。

 

「二酸化炭素濃度が高まると死亡する場合もあるとは大変だ」と思われる方もいるかと思いますが、ご安心ください。一般的な環境で40000ppmどころか、10000ppmに到達することもまずありません。その理由は、二酸化炭素濃度が上昇を続けると、その不快感に耐えられなくなり換気が行われるためです。

二酸化炭素濃度中毒による事故

二酸化炭素濃度の上昇により健康被害が生じることを「二酸化炭素中毒」と呼びます。一般的な家庭やオフィス、学校では、二酸化炭素濃度中毒が原因の事故はまず起こりません。

 

二酸化炭素中毒事故が多く発生するのは「消防設備関係」ならび「ドライアイス関係」です。

消防設備の誤作動・誤操作

二酸化炭素濃度が数万ppm、数十万ppmまで上昇し死亡事故が起こる場合の原因は、消防設備などの「誤作動」「誤操作」が主な原因です。

 

  • 2020年12月、愛知県のホテル地下駐車場で消防設備が誤作動し1名が二酸化炭素中毒で死亡。
  • 2021年1月、東京都の高層ビル地下駐車場で消防設備点検中に二酸化炭素が放出、2名が死亡。誤作動または誤操作の可能性。
  • 2021年4月、東京都のマンション地下駐車場で消防設備が誤作動し4人が死亡。二酸化炭素濃度は21% (210000ppm) に達していたことが判明。

 

いずれも、地下駐車場備え付けの消火設備(二酸化炭素を放出)による事故となっています。

 

消防庁では、地下駐車場に消火設備を設置することを義務づけています。消火設備は複数の種類から選択できますが、この中に「不活性化ガス消火設備」が含まれています*。

 

*出典 消防庁「地下駐車場等における消防用設備等」

 

不活性化ガスとは、気体を放出して火を消す設備で、駐車場内の車への汚損が少なく、現場復旧も容易なことから幅広く利用されています。この不活性化ガスの種類の1つとして「二酸化炭素」が用いられています。二酸化炭素は、「人命に対し非常に危険」「危険・放出前に退室必要」と、不活性化ガスの中で最も注意を要するガスとされています。

 

*出典 日本ドライケミカル株式会社 ガス系消火設備比較表

 

人命への危険を減らすため、現在では二酸化炭素以外の不活性化ガスである「窒素」や「混合ガス」が積極的に用いられるようになっていますが、過去に設置された二酸化炭素消火設備が使用され続ける場合も多いため、注意が必要です。

ドライアイスの不適切な取り扱い

ドライアイスは「固体状態の二酸化炭素」であり、-78.5℃より高い温度になると、液体にならずに気体として昇華します。

つまり、「ドライアイスが置いてある-78.5℃以上の場所」では大量の二酸化炭素が発生します。給排気が行われている環境であれば、二酸化炭素が外に出ていくので問題ありませんが、密閉された環境の場合、二酸化炭素濃度が上昇を続け、深刻な健康被害が生じる場合があります。

  • 社用車で174kgのドライアイスを運搬中、帰化したドライアイスが社内に充満し呼吸困難に。救急車で搬送された後、右小脳出血、急性二酸化炭素中毒、高血圧性脳内出血と診断。
  • 製氷会社の配達員が、軽乗用車で300kgのドライアイスを搬送中に意識不明。二酸化炭素中毒と低体温症を発症。
  • ドライアイス貯蔵庫で意識消失して倒れている4名が発見。うち1名が救急センターに搬送。低酸素血症、高二酸化炭素血症、血液phの低下(アシドーシス)と診断。

いずれも「車」や「貯蔵庫」といった密閉性の高い空間で発生しています。そして、複数の例で脱出するより先に意識不明となっています。ドライアイスを取り扱う場合は、窓を開けるなどして、取扱場所が密閉されないことが重要です。