二酸化炭素濃度と換気

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換気(空調)がないと二酸化炭素濃度は際限なく増加する

二酸化炭素濃度対策の基本は換気

家庭、オフィス、レストランや商業施設などで「二酸化炭素濃度が上昇した」ときの基本的な対策は「換気」です。

 

建築物環境衛生管理基準では「1000ppm」を超えない二酸化炭素濃度管理が必要となります。

 

ただ、眠気や集中力といった「700ppm程度でも大きく悪影響がある」ため、1000ppmに到達していない状況においても、積極的な換気による二酸化炭素濃度引き下げは効果的です。

 

対策しないと二酸化炭素濃度は上がり続ける

日本の国立研究所のひとつ「産業技術総合研究所」では、「室内CO2濃度を換気の指標として利用する研究」として、その研究結果を発表しています。

 

  • 出典
    https://www.covid19-ai.jp/ja-jp/organization/aist/articles/article001

オフィス会議室(換気なし)での実験

この実験では、オフィスの空調を止めた場合、会議室の二酸化炭素濃度が上がり続けることを明らかにしています。

 

  • 40平方メートルの会議室において8人での会議を想定した実験
  • 実験開始前の二酸化炭素濃度は500ppm程度
  • 35分間の実験で二酸化炭素濃度が1400ppm程度まで上昇することを確認
  • 35分経過後も実験を継続した場合、濃度はさらに際限なく上昇すると考えられる
  • 画像引用元
    https://www.covid19-ai.jp/getattachment/a47f6d35-2817-4868-8c3d-2e22d448f8e0/s_3_1.jpg

オフィスフロア(執務スペース、換気あり)での実験

次に、産業技術総合研究所では広いオフィスフロアでの二酸化炭素濃度に関する実験も行われています。なお、会議室の実験と異なり、空調を稼働させた際の二酸化炭素濃度の上昇を調べています。

 

  • 3,000平方メートルで214人の席数に対して、約半数の110人が着座していると想定
  • 業務時間中、オフィス空調は稼働させる(業務時間外は稼働しない)
  • 実験開始前の二酸化炭素濃度は450ppmを下回る程度
  • 実験開始後、ランチタイムでいったん濃度が下がったが、その後も濃度が上昇し、650ppm程度まで上昇

この実験のポイントは以下の2点です。


  • オフィス出勤者が半数程度で、かつオフィス空調が稼働していたとしても、二酸化炭素濃度は650ppm程度まで上昇する
  • オフィス出勤者が全員着座して勤務した場合、オフィス空調が稼働していても、二酸化炭素濃度は1000ppmを超えることが想定される

 

つまり、「オフィスの換気(空調)が行われていれば必ず、二酸化炭素濃度の指針値1000ppmを下回る」わけではないということです。

住宅(換気あり)での実験

最後に住宅での実験です。

 

  • 43平方メートルの室内で、2人が就寝した場合の二酸化炭素濃度を測定
  • 当初、600ppmを下回る濃度だったが、換気口を掃除していない場合は最大1400ppm程度まで上昇
  • 換気口を掃除した後は、最大で1000ppm程度となり濃度上昇が抑えられた
  • 画像引用元
    https://www.covid19-ai.jp/getattachment/1ffd95bf-b0a4-4271-bb4e-48ae016be172/s_9_1.jpg

 

そして、起床後に窓を開けると5分程度で二酸化炭素濃度が半減していることが判明しました。

 

24時間換気が行われているからといって、それだけに頼るよりは、窓開けを併用することの効果が高いことがわかります。また、換気口を掃除することで二酸化炭素濃度の上昇が抑えられることも明らかとなりました。

換気の具体的な手順

さて、換気にはおおまかに3種類あります。

 

  • 室内の空気を屋外に排出し、室内の二酸化炭素濃度を下げる(排気)
  • 屋外の空気を室内に入れて、室内の二酸化炭素濃度を下げる(給気)
  • 排気と給気を同時に行う(給排気)

 

以下では、「今日から取り組める二酸化炭素濃度対策」として、具体的な換気手順を解説いたします。

窓開け

2003年7月以降に着工した住宅では、機械的に換気を行う設備の設置が義務付けられています。このため、何もしなくても「2時間で室内の空気が全て入れ替わる」ように設計されています。

 

換気の方式により「排気のみ機械換気」「給気のみ機械換気」「給気と排気の両方が機械換気」の3通りがあります。

 

 

オフィスビルは住宅以前より機械換気(空調機器による換気)が導入されており、現在ではほぼ全てのオフィスビルで自動的に換気が行われています。

 

「2時間で空気が全て入れ替わるように設計されている」ということは、原理上は窓開けなど他の換気方法を行わなくても、2時間待てば入れ替わることになりますが、実際は窓開けや排気ファンなどと併用されています。

 

その理由は、以下の3点です。

 

  • 人の数が多いと、機械換気を行っていても二酸化炭素濃度は上昇するため
  • 窓開けは、機械換気よりも短時間で空気が入れ替わるため
  • 空気が流れにくい箇所の空気の入れ替えを、他の方法で行うため

 

とはいえ、何もしなくても強制的に空気を入れ替えてくれる24時間換気は、屋内の二酸化炭素濃度を低く保つ上で大きく貢献してくれます。どうしてもOFFにする必要がある時を除き、基本的には24時間換気のスイッチを常時ONにしましょう。換気扇・排気ファン

24時間換気(機械換気、オフィス全体空調)

室内の二酸化炭素濃度を下げる方法は換気です。

 

  • 二酸化炭素を多く含む室内の空気を外に出す(排気)
  • 二酸化炭素濃度が低い屋外の空気を中に入れる(給気)
  • 給気と排気を両方行う(給排気)

 

一般的なオフィスでは通常24時間換気が行われており、室内の空気は2時間程度で入れ替わるように換気設備が設置稼働しています。しかし、オフィス内にも換気が行われにくい場所があります。

 

例えば、空気の通り道から外れた場所や、会議室などです。こうした場合、「オフィスの執務スペースの大半は正しく換気されているが、一部箇所だけ二酸化炭素濃度が高止まりしている」ことがあります。

 

そもそもオフィスの中に「二酸化炭素濃度が上昇しやすい場所があるかどうかを知る」には、二酸化炭素濃度計で測定を行わねばなりません。定期的に測定を行い、濃度が上がりやすい場所が判明した場合、「空気の通り道を作る」「ドアや窓を開ける」といった工夫が必要です。

 

また、「空気はよく通るが、一時的に人口密度が高くなり二酸化炭素濃度が急上昇する」場合もあります。例えば「大会議室」「セミナールーム」といった、大人数を収容するスペースです。会議やセミナーの最中は、機械換気の強度を高くする、窓やドアを一部開けるといった工夫を行うことで、会議やセミナー実施中でも、室内の二酸化炭素濃度を下げられます。

換気扇・排気ファン

窓開けや24時間換気は、「室内のすべての空気を入れ替える」ために行う換気(全体換気)ですが、換気扇や排気ファンは「コンロ周辺」「トイレ」「風呂」といった特定の場所だけの換気を行うために設置された換気設備です(局所換気と呼ばれます)。

 

局所的な換気により、ニオイの排出、湿気の排出、ならび二酸化炭素濃度の低減に役立ちます。ただ、室内全体の二酸化炭素濃度を引き下げるほどの換気力はないため、あくまで補助的な換気となります。

換気するタイミングや時間を知るには、二酸化炭素濃度の測定が重要

今回ご紹介した産業総合研究所の実験からも明らかな通り、二酸化炭素濃度を低減するには複数の換気方法の併用が非常に有効です。

 

24時間換気をベースとしつつ、窓開けや換気扇・ファンを併用することで、24時間換気だけでは下げられない水準まで二酸化炭素濃度を低減できます。

 

そして、二酸化炭素濃度対策としての換気を行う上で大切なのは、「二酸化炭素濃度を測定する」ことです。

 

住宅やオフィスの二酸化炭素濃度は、人数や面積からある程度推察はできますが、各住宅やオフィスの立地や物の配置、人員数などにより大きく変動します。このため、濃度の測定を行わずに推測値に従って換気を行った場合、「実際測定してみると全く換気が足りていなかった」という事態になる場合があります。

 

正しい二酸化炭素濃度管理を行い、健康で高い集中力が維持できる環境を維持するためには、二酸化炭素濃度計を用いた計測が必要です。実環境の濃度を知ることではじめて、「いつ、どの方法で、どれくらいの時間」換気をすればよいか分かります。

 

加えて、「24時間換気だけで十分なのか、それとも24時間換気だけでは足りず別方法との併用が必要か」についても数値で示してくれます。

 

当サイトの「二酸化炭素濃度計を導入する際に気をつけることはなにか」をご覧いただき、正しい測定を行うことができ、問題発生時に適切なサポートが得られる二酸化炭素濃度計をぜひ導入ください。