この記事に書いてあること
換気設備を設置する上では、「どういう業態の建物であれば、1人あたりどの程度の面積を占有するか」を考慮した上で24時間換気を行うための換気設備を取り付けます。例えば、飲食店・レストラン・店舗であれば1人あたり面積は3㎡、旅館やホテルであれば10㎡といった具合です。
取り付けられた換気設備は、建物内の人口密度が想定の範囲内であれば正しく動作します。例えば、東京ドームのような数万人が詰めかける設備であっても、想定された人数の範囲内であれば問題なく換気が行われます。
問題は、「建物内の人口密度が想定を大幅に超えた場合」です。この場合、備え付けの24時間換気設備で行える換気量を大幅に超える換気が必要となります。今回は、施設ごとに「24時間換気設備を大幅に超える換気が必要になった場合、どのような換気を行えばよいか」についてお伝えします。
オフィスを借りる際、面積に応じて「何人入るか」「荷物がどの程度入るか」などを計算し、「この広さであれば、今後事業拡大で何人まで増えても大丈夫」という想定のもとに、賃貸契約を結ぶのが一般的です。よって、当初の想定の範囲内であれば問題はありません。
問題は、「想定を大幅に超える人員が入ることになった」場合です。例えば、以下のようなケースです。
オフィスの人口密度が高まると、「二酸化炭素濃度の上昇による危険・ならび思考力低下」「過密であるため、ウイルスが感染しやすくなる」という問題が起こります。
こうした状況での換気は「24時間換気が稼働している」という前提で、以下を推奨します。
高層ビルの場合は、窓が開けられないケースも多いですが、低層のオフィスビルであれば、窓が開けられるビルも少なくありません。窓を開けることで、温度の変化や、吹き込む風による影響、花粉などの異物が入ってくるとったデメリットがあります。しかし、窓開けによる換気量は多くの場合24時間換気の換気量を大きく上回るので、屋内の空気環境は大幅に改善されます。
「営業時間中は常に開ける」「休み時間だけ開ける」「全開/半開/少しだけ開ける」など、自社の空気環境に合った換気が行える点も便利です。
例えば、執務スペースと会議室がパーティションで仕切られている場合、人口密度や滞在時間が長い部屋のほうが二酸化炭素濃度が上昇しやすいです。また、会議室のドアを閉めていたり、パーティションで仕切られた片方の部屋の天井にエアコンや給気口がなかったりすると、24時間換気による空気の流れが阻害され、換気が行われにくい場合もあります。
こうした状況を防ぐため、パーティションで仕切られたスペースのドアは開けっ放しにしておくことが望ましいです。内密の会議を行う場合などは、会議時間だけは閉めて、会議が終わったらすぐに開けるようにすれば、空気環境の悪化は最小限で食い止められます。
排気を行うためのファンには、「24時間回っているもの」と、「スイッチを押した時間のみ回すもの」があります。スイッチでON/OFFできるファンや換気扇は、オフィス全体の換気というよりは、設置場所周辺の排気に特化したものが大半ですが、排気が促進されることで室内環境の改善につながります。
このため、人口密度が高いオフィスではスイッチでON/OFFできるファンを含めすべてのファンを常時回しておくのもよい方法です。
オフィスの場合、外気を機械的に取り込んで給気し、その空気が屋内を流れることで「空気の通り道」ができます。最終的には、排気ファンや換気扇が屋内の空気を排出するのですが、この空気の通り道が邪魔されると、屋内の空気が想定通りに流れず滞留し排出が阻害されます。
空気の通り道を整えるためには、給気と排気がどこから行われているかを確認し、通り道を阻害するものを撤去、または移動させることです。例えば、部署ごとのデスクを区切るパーティションが空気の流れを阻害している場合は、パーティションを移動/撤去/向きを変える、といった具合です。
24時間換気は、空気の通り道を整えないとその効果を発揮できないので注意しましょう。
筆者がよく通うコーヒーチェーンは、コロナ禍にも関わらず常に混んでいます。席に座れない人が、店内の壁に寄りかかり、「早く席が空かないかな」と空席待ちの光景が見られるほどです。
また、テイクアウト率も高いため、テイクアウト商品を注文する人や、注文後受け取りを待つ人、ネット注文したものを受け取りに来る人などが行き交っています。
このように混雑した空間なので、「想定を大幅に超える人数が客席スペースにいる」状態で、換気の観点からは問題があります。
こうした店舗の場合、24時間換気に加えてどのような換気を行えばよいでしょうか。
ショッピングモールや駅ナカにある飲食店は、そもそもドアがないか、店のドアが常に開け放たれた状態になっています。ドアを開けても外気が入り込まないので、店内の温度変化を気にしないで良いからです。このため、店内に空気が滞留せずに換気が促進されます。
通常の路面店の場合は、常時ドアを開放すると暖気や冷気が入り込んでくるため温度管理ができません。よって、想定を大幅に上回る人数が入っていて、他の換気方法が取れない時に限定して「一時的にドアを開ける」のが効果的です。
客席の窓を少しだけ、または短時間開ける方法です。現在、新型コロナウイルス対策として、窓開けを行っている店舗も多いでしょう。
ショッピングモールや駅ナカの店舗は、入り口のドアを開けても外気が入り込んできません。よって客席に窓がある店舗では、換気を促進させたいタイミングで窓を開けるのがよいでしょう。
路面店の場合、ドア開けと同様、窓を開けると暖気や換気が入り込んできます。このため、窓開けは「通常より多い人数が店内に滞在しているとき」に一時的に開けるのが現実的です。
窓を大きく開けると、外気が入り込んできて寒くなる、また外から中に風が吹き込むといったデメリットがあります。しかし、短時間であっても強力に給排気が行えるため、空気が短時間で入れ替わります。
24時間換気とは別に排気ファンが設置されている場合は、排気ファンを回転させて追加の換気を行なえます。排気ファンが効果的に動作すれば、ドア開放や窓開けが不要な場合もあるでしょう。
なお、排気ファンを回すと、屋内の空気が急激に外に出ていくので、短時間で室温が大きく変化する場合があります。換気と室温のバランスを考えて、換気を行ってください。
新春初売りセールや新型ゲーム機販売などで、非常に混雑したデパートや量販店を思い浮かべてください。
開店まで並んだ人が、お目当ての商品を買いに大挙してやってきて、売り場内で商品を探したり、売り場レジの行列に並んでいる光景です。明らかにフロアごとの想定人員を一時的に超過している状態です。
こうした場合の換気についてお伝えします。
24時間換気設備で、換気の強弱を調節できる場合、特に混雑する時間帯は換気の設定を強くするのは最も手がかからない方法です。屋外から取り入れる給気量、ならび屋外に出される排気量の両方が増加します。
急激に換気が進むことで、室温に影響がでる場合は、あわせて冷暖房を強くするなどの対策が必要となる倍があります。
初売りや新型ゲーム機の発売、限定版商品の販売など、店内で大きな混雑や行列が予想される場合は、通常の売り場ではなく、換気のよい別な場所を一時的に使い販売するという方法です。
通常の販売フロアだと、他の商品が高く積まれておりフロアに空気が流れにくいケースは多々あるかと思います。こうした場合は、一時的に店舗の一階や催事場などの換気がよい場所・天井が高い場所を選んで販売すると、人が多くても換気が十分間に合うと考えられます。
また、「換気の良い場所で販売する」に加えて、「当日販売なし。事前支払い済の予約者受取のみ」といった形で、販売方法を変更することで、来客数を減らす、または滞在時間を短くして、空気環境の悪化を最小限にするのも有効です。
店舗のドアを開けることで換気量を一時的に増加させる方法です。デパート等の大型商業施設では多くの場合は入り口のドアは閉められています。ドアが閉られたままだと、施設内の空気は24時間換気でしか換気されなくなるため、換気量を増やすために入り口のドアを開けるのは効果的です。
1階のドアから入ってきた空気は、1階だけに留まるのではなく、他のフロアにも移動するため、結果建物全体の換気が促進されます。
なお、開け続けたままだと冷気や暖気が入り込んできて温度調節が難しくなるため、ドアを開けっ放しにする時間は、混雑する時間帯(開店直後など)に限るのがよいでしょう。