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VOC(揮発性有機化合物)と室内環境 - 換気の時間 | 換気の総合情報サイト

VOC(揮発性有機化合物)と室内環境

この記事の目次

VOCと室内環境

VOC (揮発性有機化合物) は、主に建材や家具、壁紙などに用いられる複数物質の総称で、特に有名なものがホルムアルデヒドやアセトアルデヒドです。VOCを含む空気を継続的に吸い込むと、喘息、めまい、頭痛、皮膚炎などの症状が現れる場合があります(この症状は「シックハウス症候群」とも呼ばれます)。

 

VOCは、二酸化炭素濃度などと異なり「すべての人に等しく影響が及ぶ」ものではなく、「一部の人のみに強く症状が現れる」ものです。二酸化炭素濃度が1000ppmを超えた程度で、日常生活に大きな支障が生じるわけではありませんが、シックハウス症候群を強く発症した場合は、通院が必要な症状が継続的に現れます。VOCを含む建材などを取り除くわけにもいかないので、問題物質を取り除くことが出来ない(室内環境を根本的に改善できない)のが大きなポイントです。

 

以下では、「完全に除去できないVOCを、どのように付き合っていくことで室内環境を改善するか」についてお伝えします。

VOCとは何かを理解する

VOC対策物質と濃度指針値

厚生労働省は、VOCについて室内濃度指針値(この濃度の空気を生涯摂取しても、健康への有害な影響は受けないだろうと判断された基準値)がある13種類の物質を定めています。

VOC物質名 用途 室内濃度指針値
ホルムアルデヒド 接着剤,防腐剤 100μg/㎥
トルエン 接着剤,塗料の溶剤 260μg/㎥
キシレン 接着剤,塗料の溶剤,可塑剤 870μg/㎥
パラジクロロベンゼン 防虫剤,芳香剤 240μg/㎥
エチルベンゼン 塗料の溶剤 3800μg/㎥
スチレン 断熱材 220μg/㎥
クロルピリホス 殺虫剤,防蟻剤 1μg/㎥、小児は0.1μg/㎥
フタル酸ジ-n-ブチル 可塑剤 220μg/㎥
テトラデカン 塗料の溶剤,灯油 330μg/㎥
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 可塑剤 120μg/㎥
ダイアジノン 殺虫剤 0.29μg/㎥
アセトアルデヒド 接着剤,防腐剤 48μg/㎥
フェノブカルブ 防蟻剤 33μg/㎥

出典: 国立医薬品食品衛生研究所

https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/situnai/shisinqa.pdf

用途については本サイトで記載

 

VOCは建材や家具、壁紙にのみ用いられている物質ではなく、パラジクロロベンゼンのように芳香剤に用いられている物質もあります。つまり、建材などの「換気により濃度を低くする以外に対処しようがない物質」だけでなく、「室内にVOC物質を含むものを置かない」ことで対処できる場合もあります。

 

なお、上記とは別に「TVOC濃度(総VOC)」という名前で、全てのVOCをひとまとめにした暫定目標値も設定されています。この数値は、上記13種類だけでなく、単体では濃度指針値を設定できないそれ以外のVOCも含まれています。

 

家庭などで、住宅の空気の状態の良し悪しを判断するために、13種類のVOC物質を都度測定するのは現実的ではありません。このため、TVOC濃度という1つの指標で空気の状態を知る目安として利用されます。

TVOC (総揮発性有機化合物) 暫定目標値 400μg/㎥

VOC濃度の測定方法

VOC濃度を知りたい場合、VOCの各物質、またはTVOCを測定する測定器が販売されています。各測定器は、測定方法や信頼性もそれぞれ異なるため、「VOC測定器を買ってみたが、表示されている数値はずっと不正確だった」ということもあります(そして、そもそも「間違った数値が表示されている」ことに気づかない場合も多いです)。

 

VOC濃度測定器の導入を検討する場合に、注意すべき点は2点です。

(1)本当に必要か

最も信頼できるVOC測定器は、「環境省の性能試験を行い、性能基準に準拠しているもの」です。そしてこの次に来るのが、「環境省の性能試験は行っていないが、十分な性能があるもの」となります。前者の場合は100万円以上するものが多く、後者の場合でも数十万台前半はします。

 

これだけ高額な測定器を家庭で導入する必要が本当にあるのかどうかを、一度再考してみることをおすすめします。家族に重度のシックハウス症候群を発症していて、濃度を常にチェックしないと健康に大きな問題が生じる、といった場合でもなければ、これほど高額の測定器は不要かと思います。

 

「シックハウス症候群の症状は出ているが、換気すれば緩和される」程度であれば、測定器を導入する必要なないでしょう。

(2)測定方法にNDIR型かFID型が用いられているか

VOCを測定する上で信頼できる測定方法は、環境省の試験方式に準拠したNDIR型(非分散型赤外線吸収方式)、またはFID型(水素炎イオン化型検出方式)かのいずれかとなります。他の方式が採用されている測定器は信用性が低いため、選択肢から外すことをお勧めします。

 

なお、インターネット数千円程度で購入できるTVOCの測定器は、いずれも「NDIR型またはFID型以外の測定方式を用いている」ことから、数値の信用性は低いです。購入しても、正しくない数値が表示される可能性が高いため、購入は避けましょう。

換気でVOCを低減し室内環境を守る

良好な室内環境を維持するためには、室内のVOC濃度を下げることが望ましいです。VOCを含む空気を室内から屋外に放出する(排気)、ならび、屋外の新鮮な空気を室内に入れる(給気)を繰り返し行うことで、VOC濃度を下げられます。

 

以下、おすすめの換気(給排気)方法についてご紹介します。

VOC対策の換気方法

VOC対策の換気(ならびVOC物質除去方法)は大きく4つとなります。以下では、効果が高いと考えられる順にお伝えします。

窓開け

短時間で効果的、かつ手軽に行えるVOC排出、ならび外気取り入れ方法は「窓開け」です。一般的に窓を開けると数分で室内の空気が入れ替わります。また、空気を屋内に通すことで、窓を開けた部屋だけでなく、他の部屋にも新鮮な空気が行き渡ります。効率の点では、窓開けが最も効果的です。

 

反面、暑い日や寒い日、花粉の季節、雨の日に窓を開けると、「室温が大きく変化する」「花粉が屋内に入り込む」「湿度が急上昇する」といった事態を引き起こし、逆に室内環境を悪化させてしまうため、注意が必要です。

24時間換気

機械的に給排気、または排気を行うのが24時間換気(機械換気)です。スイッチが入っていれば、意識せずに勝手に換気される点が強みです。また、第一種機械換気のように「外気を直接取り入れない」場合は、室内の温度変化が起こりにくい点もメリットとなります。

 

24時間換気は、室内の空気が2時間で入れ替わるように設計されています。数分で空気が入れ替わる窓開けと比べると時間がかかるため、急ぎで換気したい場合は窓開けを併用するのがよいでしょう。

換気扇・ファン

特定の場所を短時間で換気する方法です。室内で特に違和感を感じる箇所があれば、その場所に限定してファンで換気するのは効果的です。短時間で急速排気が行えるため、多くのVOC物質を排出できます。

 

なお、ファンによる換気は局所的であるため、室内全体の換気とはならない点に注意が必要です。24時間換気が利用可能な場合は併用するのがよいでしょう。

空気清浄機

正確には「空気清浄機」で換気は行えません。空気清浄機は、ファンの力で屋内の空気をかき回して、フィルターに物質を吸着させるもので、給気や排気は行えないためです。

 

しかし、空気清浄機のフィルターにVOC物質を吸着させることで「換気はできないがVOC物質を低減」できます。よって、窓がない部屋でVOC物質を減らしたい、24時間換気が利用できない場合など効果的です。ただ、VOC物質を減らす方法としては、他の方法と比べて力不足なので、可能であれば他の方法と併用することが望ましいです。

 

最後に、空気清浄機には大きく「ファン方式(フィルター式)」と「電気集塵式(静電気式)」がありあすが、VOCに効果があるのはファン方式です。電気集塵式は効果がないため、VOC対策を目的に購入する際は注意が必要です。