室内環境とは何か

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室内環境とは何か

室内環境とは、人が室内で健康かつ快適に過ごすためには、どのような対策が必要かを明らかにする研究、または研究・測定値に基づく屋内の整備を指します。

例えば、室内の「二酸化炭素濃度が高すぎる」「暑すぎる」「寒すぎる」「湿度が高すぎる」「湿度が低すぎる」「音が大きすぎる」「明るすぎる」「暗すぎる」といった環境は、快適な室内とは言えません。

もちろん、何を持って快適とするかは個人差があります。夏にエアコンを付けている室内で、「寒い」という人がいる反面、「まだ暑い」という人がいるのが良い例です。

しかし、研究や調査に基づき「人体に安全である指標(例:二酸化炭素濃度、ホルムアルデヒドなど)」「人体にとって快適である指標(温度、湿度など)」がある程度定められています。例えば、二酸化炭素濃度は1000ppmを超えないようにすべき、といった具合に数値で明確化されています。

「健康で安全な室内環境を実現する」ということは、室内環境を「研究や調査に基づく指標値」に近づけることを意味します。

室内環境の5つのポイント

室内環境を考える上で、特に重要となる5つのポイントを見ていきましょう。

空気

「空気が臭い」「空気に細菌やウイルスがいる」「空気にほこりや花粉がいる」「空気中の二酸化炭素濃度、ならび特定物質の濃度が高い」といった状況を考えてみてください。こうした状況では、室内環境が安全・快適ではありません。

 

このため、室内環境を改善するための対策が必要となります。一般的な方法を用いて、室内空気をどう改善できるか(できないか)を、以下にまとめました。

臭い 細菌・ウイルス ほこり・花粉 特定物質濃度
窓開け換気(給排気) 効果あり 効果あり 効果あるが、花粉症の季節は逆効果 効果あり
住宅の24時間換気(給排気) 効果あり 効果あり 効果あるが、花粉症の季節は逆効果 効果あり
換気扇・ファン(排気のみ) 効果あり 効果あり 効果あり 効果あり
エアコン(換気機能なし) 効果なし 効果なし 効果なし 効果なし
エアコン(換気機能付き・給排気) 効果あり 効果あり 効果あるが、花粉症の季節は逆効果 効果あり
空気清浄機(給排気なし) 効果あり 効果低い 効果なし 効果あり

室内環境の改善には、大きく分けると「換気(給排気)」「換気(排気のみ)」「空気清浄機」の3つの方法があります。

何が行われるか
換気(給排気) 外気を室内に取り入れると同時に、室内の空気を外に排出する
換気(排気のみ) 室内の空気を外に排出する(外気は取り入れない)
空気清浄機 フィルターでニオイやほこり・花粉などを吸着させる(給排気は行われない)

まず、換気(給排気)ですが、これは「外気を室内に取り入れる」とともに、「屋内の空気を排出」します。外から新鮮な空気が入ってきて、同時に、屋内の空気を排出するため、短時間で効率よく空気を交換できます。

次に、換気(排気のみ)ですが、これは屋内の空気を外に出すことはできますが、外気の取り入れは行いません。換気扇を回して、調理中のニオイやガスを外に出すことをイメージしていただければ分かりやすいと思います。

最後に空気清浄機です。空気清浄機は換気を行う機能はありません。空気自体を交換するのではなく、室内の空気そのものをクリーニングします。具体的には、風を出して室内の空気をかき混ぜ、この空気を空気清浄器内に取り入れることで、空気中のニオイ物質、ほこりや花粉を吸着させ、空気をきれいにします。

どの方法も長所と短所があるため、使う時期や時間の長さを考慮したうえで利用しましょう。

温度

室内の温度は、寒すぎても暑すぎても快適ではありません。快適でないだけでなく、健康を損なう原因にもなります(熱中症など)。このため、快適で健康を損なわない温度を保つ必要があります。

 

温度対策としては、以下のような方法があります。

夏の暑さ対策 冬の寒さ対策
窓開け換気(給排気) 効果あり(外気のほうが温度が低い場合) 効果なし(逆効果)
住宅の24時間換気(給排気) 効果あり(外気のほうが温度が低い場合) 効果なし(逆効果)
エアコン 効果あり(冷房機能) 効果あり(暖房機能)
ストーブ・ヒーター 効果なし 効果あり
扇風機 効果あり(温度を下げる効果なし) 効果なし
サーキュレーター 冷房と併用して効果あり 暖房と併用して効果あり

まず換気ですが、夏は「外気のほうが涼しい場合」に効果があります。例えば、屋内は28度だが、屋外は24度というときは、窓開けすることで室内が涼しくなります。逆に「冬の寒さ対策」としての換気は逆効果になります(外気のほうが温度が低いため)。

エアコンですが、夏の暑い日は冷房、冬の寒い日は暖房を使うことで温度調節が可能です。

ストーブ・ヒーターは暖房器具なので、冬に室内の温度を上げる効果があります。

扇風機は、屋内の温度を下げるのではなく、「風を強く当てることで、冷たく感じさせる」ものなので、体感温度を局所的に下げることはできますが、室内の温度事態を下げる効果はありません。

サーキュレーターは、室内の空気をかき混ぜることで、室内の天井近くの空気の温度と、床近くの空気の温度を均一にします。暑い時に使うと、冷房の効果を高めることができ、寒い日に使うと暖房の効果を高められます。ただし、サーキュレーター単体には冷暖房の機能はありません。

湿度

一般的に、夏になると湿度が高くなり、北陸地方を除き冬になると湿度が低くなります。

 

湿度が高いと、肌がベタベタして不快になる、かびが発生するといった問題から室内環境が損なわれます。逆に湿度が低いと、喉が痛くなる、(喉が乾燥しているため)ウイルスが付着しやすくなるといった問題が生じます。

 

このため、夏が近づくと除湿が必要となり、冬が近づくと加湿が必要です。どのような方法があるか、以下で見てみましょう。

高湿度対策(除湿) 低湿度対策(加湿)
窓開け換気(給排気) 効果あり(外気のほうが湿度が低い場合) 効果なし(逆効果)
住宅の24時間換気(給排気) 効果あり(外気のほうが温度が低い場合) 効果なし(逆効果)
換気扇・排気ファン 効果あり 効果なし
エアコンの除湿機能 効果あり 効果なし
除湿機 効果あり 効果なし
除湿剤 効果あり 効果なし
加湿器 効果あり 効果なし

窓開けや24時間換気は、夏に「室内より外気のほうが湿度が低い場合」は効果があります。また、夏だけでなく、春・秋にも効果的です。逆に、冬の外気は湿度が非常に低いため、換気による加湿効果は望めません(逆効果です)

エアコンの除湿機能は、室内の空気を冷やすことで、エアコン内部で空気から水を取り出し、これを外に出すことで湿度を下げます。除湿機能という名前の通り、除湿効果はありますが、加湿は行なえません。

除湿機は「コンプレッサー式(エアコンの除湿機能と同じ仕組み)」と「デシカント式(乾燥剤を用いる方法)」という2つの方式がありますが、いずれも短時間で高い除湿効果があります。

除湿剤は、水分を吸収する性質を持つ塩化カルシウムを、タンク型、またはシート型にして押入れやたんすなどの除湿目的で利用されるものです。除湿機と違い、電気を利用せず、ゆっくり時間をかけて徐々に除湿を行います。

加湿器は、水を沸騰させて蒸気を出す方式や、超音波で微細な水を放出する方式がありますが、いずれも「水タンクに入れた水を使って加湿をする」ものです。一般的に、沸騰式のほうが加湿効果が高いですが、静音性や安全性(水を沸騰させない)、電気料金といった観点で超音波式も広く利用されています。

「近所の家がリフォームをしていて、一日中ひどい騒音を立てている」という状況に直面した方は少なくないでしょう。大きな騒音を長時間聞かされるのは、単に不快なだけでなく、体調不良の原因ともなります。

 

どのような対策があるか見ていきましょう。

他の人が発生させた騒音対策 自分が発生させる騒音対策
住宅への防音材使用 効果あり 効果あり
防音シート・マットなどの防音グッズ 効果あり(製品により効果の程度はさまざま) 効果あり(製品により効果の程度はさまざま)
イヤーマフ・耳栓 効果あり なし
ノイズキャンセリングヘッドホン 効果あり なし
防音室 効果あり 効果あり

住宅への防音材使用は、新規に戸建住宅を建てる、部屋をリフォームする場合などに、防音効果の高い建材を利用するというものです。他の人が発生させた音にも、自分が発生させた音にも効果がありますが、コストが高いこと、また賃貸住宅ではこうした対策が取れない点がボトルネックとなります。

 

防音シート、マットなどの防音グッズは、ホームセンターなどで多様な製品が販売されています。製品により効果は大きく異なります。

 

イヤーマフや耳栓は、耳を物理的に塞ぐことで、耳に入ってくる騒音を低減するものです。効果は高いですが、必要な音が聞こえなかったり、耳に圧迫感があったりするため、特に騒音が大きな時に一時的に利用されるのが一般的です。耳栓はいびきの騒音対策としても広く利用されます。

 

ノイズキャンセリングヘッドホンは、ヘッドホン内で騒音と逆の空気の振動を発生させ、騒音を打ち消す効果があるヘッドホンです。一人で集中して作業するような場面ではよいですが、必要な音も聞こえにくくなるため、常に装着するものではありません。

 

最後に防音室です。楽器を演奏される方が、外に騒音を出さなくするために広く利用されています。なお、防音室を設置すると、室内のかなりスペースが防音室で占有されること、また費用も高額であるため、気軽に導入できるものではありません。

明るさ

室内の明るさは主に「日光」と「照明」によりもたらされます。これをうまく調整して、「快適な明るさ」を作り出すことで、快適な室内環境が実現できます。

 

また、同じ室内であっても「手元に強い明るさが必要な手芸」では、1000ルクスの明るさが必要ですが、廊下は100ルクスで十分など、「明るさが強ければ強いほどよい」というわけではありません。*

 

* https://www.jisc.go.jp/

JIS 日本産業規格ホームページ内 JIS Z9110:2010 照明基準総則から引用。閲覧には登録・ログインが必要。

 

以下では、明るさと室内環境について確認してみましょう。

光源 遮光
日光 はい(調節不可能) いいえ
照明 はい(調節可能) いいえ
カーテン・ブラインド・シート いいえ はい

はじめに日光です。建物の窓から日光が入ることで、室内が明るくなります。日光の量自体は調節できないため、カーテンなどを用いて光の量を調節する(遮光する)必要があります。

 

次に照明です。LEDや蛍光灯、白熱球などを屋内の天井に取り付け点灯させたり、机に卓上ライトをおいて点灯させたりすることで、室内が明るくなります。蛍光灯と白熱球はONとOFFしかありませんが、LEDはより細かく光の量を調節できるため、ピンポイントで快適な明るさに設定可能です。

換気と室内環境

最後に、換気が室内環境に与える影響に確認してみましょう。

空気・温度・湿度: 影響あり

換気を行うことで、室内の空気を改善できます。具体的には「二酸化炭素濃度が高まった室内の空気を屋外に排出し、二酸化炭素濃度を下げる」「ホルムアルデヒドなどのシックハウス症候群物質を屋外に出し、アレルギー反応を緩和する」といった効果があるためです。例外は、「花粉症の時期の換気(給気)」です(花粉が室内に多く入り、室内環境が損なわれる場合があります)。

 

次に、換気により温度の改善も行えます。夏の暑さ対策としては、「屋内より屋外の温度が低い場合」に、窓開けなどの換気を行うことで、室温を下げられます。なお、冬の寒さ対策としては用いることは出来ません(屋外の温度が、屋内の温度より高いことがないため)。

 

換気は湿度対策としても有効です。特に、換気を行い屋内の湿度を下げるのは非常に有効で、カビなどに起因する住宅の劣化防止に高い効果があります。なお、換気を加湿のために用いることはありません(加湿が必要な冬は、外気のほうが湿度が低いため)。

音・明るさ: 影響なし

換気は、騒音対策や明るさ調整といった目的には効果がありません。窓開けを行うと、外の騒音が大きく室内に入ってくること、また、屋内の音が外に出ていくことから、逆効果となります。