この記事に書いてあること
良好な室内環境を実現するためには、「空気」「温度」「湿度」「音」「明るさ」の5つの要素が満たされている必要があります。そして「何を持って安全で健康的か」は測定して客観的な数値として理解することが望ましいです。
当サイト「換気の時間」では、換気の観点から「空気」「温度」「湿度」の3つに関連する指標を以下でご紹介します。なお、以下の指針値(測定値・基準値)は2021年5月時点のものとなります。
改正建築基準法で規定されているのは、「建物内の空気が1時間でどの程度入れ替わるか」です。住宅は1時間で半分、2時間で全て入れ替わることが必要となります。
この法律は2003年7月以降に着工した住宅に対して自動換気設備の設置を義務付けています。これ以前に着工された住宅はこの法律の対象外となります(設備設置の義務なし)。
住居の居室など | 0.5回/h以上 |
・出典 国土交通省 改正建築基準法に基づくシックハウス対策の概要
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.files/gaiyou.pdf
建築物環境衛生管理基準は、学校や保育施設以外の建物で一般的に用いられている基準です。
浮遊粉じん | 0.15mg/㎥以下 |
一酸化炭素 | 10ppm以下 (特例として外気が10ppm以上の場合は20ppm以下) |
二酸化炭素 | 1000ppm以下 |
温度 | 17~28度 |
相対湿度 | 40~70% |
気流 | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/㎥以下 |
浮遊粉じん | 0.15mg/㎥以下 |
一酸化炭素 | 10ppm以下 (特例として外気が10ppm以上の場合は20ppm以下) |
二酸化炭素 | 1000ppm以下 |
気流 | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/㎥以下 |
・出典 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
学校や保育施設で用いられている基準です。建築物環境衛生管理基準や厚生労働省のシックハウス指針値と多くの基準値が共通していますが、二酸化炭素濃度や相対湿度のように「建築物環境衛生管理基準より緩い」ものが複数あります。
また、基準値を確実に下回る必要がある値については「~以下」と記載され、目標値となっている値については「~以下が望ましい」と記載されています。
2019年にはキシレンの指針値が厳しくなっています。
二酸化炭素濃度 | 1500ppm以下が望ましい |
温度 | 17~28度が望ましい |
相対湿度 | 30~80%が望ましい |
浮遊粉じん | 0.10mg/㎥以下 |
気流 | 0.5m/秒以下が望ましい |
一酸化炭素 | 10ppm以下 |
二酸化窒素 | 0.06ppm以下が望ましい |
VOC: ホルムアルデヒド | 100μg/㎥以下 |
VOC: トルエン | 260μg/㎥以下 |
VOC: キシレン | 200μg/㎥以下 |
VOC: パラジクロロベンゼン | 240μg/㎥以下 |
VOC: エチルベンゼン | 3800μg/㎥以下 |
VOC: スチレン | 220μg/㎥以下 |
ダニまたはアレルゲン | 100匹/㎥以下または同等のアレルゲン以下 |
・出典 文部科学省 学校環境衛生基準 参考資料
https://www.mext.go.jp/content/20201211-mxt_kenshoku-100000613_02.pdf
シックハウス症候群対策として設けられた指針値です。継続的に数値が見直されており、2019年にはキシレン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの指針値がより厳しくなりました。
ホルムアルデヒド | 100μg/㎥ |
トルエン | 260μg/㎥ |
キシレン | 200μg/㎥ |
パラジクロロベンゼン | 240μg/㎥ |
エチルベンゼン | 3800μg/㎥ |
スチレン | 220μg/㎥ |
クロルピリホス | 1μg/㎥、小児は0.1μg/㎥ |
フタル酸ジ-n-ブチル | 17μg/㎥ |
テトラデカン | 330μg/㎥ |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 100μg/㎥ |
ダイアジノン | 0.29μg/㎥ |
アセトアルデヒド | 48μg/㎥ |
フェノブカルブ | 33μg/㎥ |
TVOC (総揮発性有機化合物) 暫定目標値 | 400μg/㎥ |
・出典 厚生労働省 室内濃度指針値一覧表
http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/situnai/hyou.html
東京都が独自に設けた指針値です。建築物環境衛生管理基準と比べ、二酸化炭素濃度は緩く設定されていますが、逆に湿度は範囲が狭められています。
暖房使用時の室内温度 | 17~22度 |
冷房使用時の室内温度 | 25~28度 |
冷房使用時の外気との温度差 | 7度以内 |
室内の湿度 | 40~60% |
二酸化炭素濃度 | 1500ppm以下 |
一酸化炭素濃度 | 10ppm以下 |
浮遊粉じん | 0.15mg/㎥以下 |
・出典 東京都福祉保健局 健康・快適居住環境の指針および改正https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/kenko/index.files/web_zenbun1.pdf
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/kenko/index.files/situnaikagakubusitu_sisinti_310117.pdf
居住する住宅や管理する建物などで、どのような基準値が必要かを正しく知ることが、安全で衛生的な環境づくりの出発点となります。
商業施設や学校などでは、建物の管理者による定期的な計測が義務付けられています。反面、家庭では測定義務がないため、「こうした値が定められていること自体、知らなかった」方も多いと推察します。
家庭では、上記表にある全ての値に注意を払う必要はありません。例えば、「二酸化炭素濃度と温度・湿度の3つ」など、「各家庭で特に重要と判断した値」を測定し、測定値が高い場合に対策を取る(窓を開ける、ファンを回す、24時間換気をONにするなど)ことは、ご家族の健康増進、ならびに建物保守の観点からも役立ちます。
ぜひ、これらの指標を日常生活でご活用ください。
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