この記事に書いてあること
皆様は、換気という言葉を聞いて最初にイメージするものは何でしょうか。多くの方は「換気=窓開け」というイメージが浮かぶのではないでしょうか。しかし、換気には種類があり、それぞれの特性を理解することで、より効率的かつ楽に換気を行えます。
換気は、大きく以下に大別できます。
換気種別 | 給気 | 排気 | 用途 |
---|---|---|---|
第一種換気 | 機械 | 機械 | 集中ダクトを設置する方法。住宅やオフィスビルなどで利用されることが多い |
第二種換気 | 機械 | 自然 | 室内外の温度差による空気圧差を利用し、外気が入りにくい。病院や食品工場など |
第三種換気 | 自然 | 機械 | 住宅の大半がこの方法。コストメリットが大きい |
第四種換気 | 自然 | 自然 | 2003年7月以降はほとんどない。昔の住宅で利用 |
以下では、上記表の内容に加えて、「全体換気」「局所換気」についても解説します。
以下では、4タイプの換気方法である「第一種、第二種、第三種、第四種」の換気について、詳しくご説明します。
給気と排気の両方を換気扇やファン等の機械(機械換気)で行うのが第一種換気です。これは住宅ならび商業物件(オフィスビルなど)の両方で用いられる方法です。自動的に確実な換気が行えることが大きなメリットです。
特に、機密性の高い住宅やマンション、また窓が開けられないオフィスビルなどでは広く利用されています。強制給気・排気を行うことから、シックハウス症候群対策としても有効です。
また、熱交換器を設置している場合が多く、外気をそのまま取り入れずに温度調整したのちに取り入れることから、「換気をしたら部屋が寒くなった(暑くなった)」ということがない点もメリットです。また、効率的に空気の温度を調整するため、「そのまま外気を取り入れた後に温度調整する第三種換気」と比べて、冷暖房代のコストメリットがあります。
デメリットとしては、ほとんどの場合はダクト設置が必須で初期コストがかかること、また常に給気と排気を機械的に行うため、電気料金がかかることがあげられます。なお最近では、ダクト不要(ダクトレス)のシステムも開発されてきています。
給気はファン等を使い機械的に行うが、排気は窓開けや排気口より自然(自然換気)に行うのが第二種換気です。
屋内と屋外の温度差により生じる気圧差を利用します(温度差換気)。機械給気により入る空気以外の外気が入りにくいのがメリットです。なお自然換気は、自然の風力を利用して行われるため、風力換気とも呼ばれます。
例えば、第二種換気を行っている建物で窓を開けても、外気が室内に入ってきません。このため、汚染物質やウイルスなどを取り込みにくいのがメリットです。この特性を生かして、病院(手術室、滅菌室など)や工場(食品工場、クリーンルームなど)で広く利用されています。住宅やオフィスで用いられることはまずありません。
デメリットとしては、壁内部に結露が起こりやすいことです。特に寒冷地ですと、結露が凍結することで壁を内部から傷める可能性があるので注意が必要です。
ぶるぼんの換気コラム
東京ドームなどの「空気によって支えられているドーム(空気膜構造方式)」は、ドーム内に空気を大量に送り込むことで、「ドーム内が外気よりも圧力が高い状態(正圧といいます)」にしています。
これにより、ドーム型の屋根が膨らんだ状態を保っています。逆に言うと、ドーム内が外気と同じ圧力の場合、ドームがしぼんでしまいます。
東京ドームは第二種換気により、正圧を実現しています。
ドーム内の高い圧力を保つために、大量の空気を機械的に取り込みますが、圧力低下を防ぐため、機械的な排気は行っていません。
窓開けや給気口等より給気は自然に行い、排気をファンなどを利用して機械的に行うのが第三種換気です。ダクトが不要でコストが低く済むこともあり、多くの住宅で採用されています。コスト面以外にも、ダクトがないためメンテナンスが簡単であることも支持される理由です。
デメリットとしては、「屋内と屋外の温度差が少ない場合、給気が行われにくい点」「給気は自然に行われるため、暑い空気(寒い空気)がそのまま入ってきてしまう」という点があります。
ぶるぼんの換気コラム
感染症病棟では患者の呼気等の汚染物質を室外に出さない事が必要とされます。
そのために使われるのが陰圧室です。
陰圧室は負圧室とも呼ばれ、 "室内の気圧が室外の気圧より低くなるように" 作られた部屋です。
陰圧室のドアを開けるとその気圧差により陰圧室内に室外から空気が吹き込ます。
陰圧室では室内の空気が室外へ自然に排出されることは無いので、室内の患者の呼気が室外へ漏れることもなく意図しない感染を防ぐ事ができます。
陰圧室は "第三種換気" によって実現されています。
給気・排気ともに窓開けや給気口等より自然に行うのが第四種換気ですが、現在ではほとんど利用されていません。2003年7月から施行された改正建築基準法では、新たに住宅を建築する際には、シックハウス症候群の緩和を目的として、計画的な換気設備の設置が義務化されたためです。
メリットとしては、電気料金がかからない、設備のメンテナンスが不要という点があります。反面、デメリットとしては、屋内と屋外の温度差が少ない時には、給気も排気も行われにくいという問題があります。
次に、これまで解説した換気方法について、どのような状況で、どの方法を選ぶべきかについて解説します。
住宅で第二種換気を用いることは、デメリットが多いため、通常は第一種換気 (給排気両方とも機械) か第三種換気 (排気のみ機械)が用いられます。
では、第一種換気と第三種換気のどちらがよいのでしょうか。一般的に言われていることは、以下の通りです。
第一種換気と第三種換気を比べると、換気の性能は第一種換気のほうが高いのは間違いありません。よって、強いアレルギーを持っている人や、シックハウス症候群の懸念がある場合、高気密住宅を希望するには第一種換気を選択すべきです。
逆に、アレルギーがない、シックハウス症候群の懸念もない、高気密住宅でなくてもよい、初期コストをできるだけ抑えたい場合は、第三種換気でも十分なケースが多いようです。
オフィスや商店の換気方法は、第一種換気で行うべきです。
オフィスは一般的な住宅よりも広いため、窓開けだけでは換気が追い付かないケースが多いためです。加えて、オフィスの高さや営業の関係上、窓開けができないといった場合がほとんどであるためです。
工場の場合、通常は第一種換気です。オフィスよりもさらに広いため、自然換気では間に合わないためです。
例外として、食品工場やクリーンルームなどでは第二種換気が利用されます。商品の製造プロセスにおける細菌やウイルス、防塵対策の観点で、機械給気以外の外気を工場内に入れたくない場合に利用されます。第二種換気であれば、屋内と屋外の空気の圧力差を利用し、万が一工場の窓が開いたとしても、屋内空気の高い圧力で、屋外空気の侵入を防ぎます。
病院も一般的には第一種換気が利用されますが、工場と同様に例外があります。
手術室や滅菌室など、浮遊菌や落下菌をほぼゼロにする必要がある設備のみ、第二種換気が用いられます。これにより、菌やウイルス等を含む空気の侵入を防ぎます。
「自然換気か、機械換気か」の次は、「全体換気と局所換気の違い」について解説します。
換気には、建物全体を換気するために行う「全体換気」と、室内の特定箇所のみを集中的に換気する「局所換気」があります。以下、簡単な表を用いて解説します。
目的 | 具体的な機器 | |
---|---|---|
全体換気 | 建物全体など広範囲の空気環境の改善 | 換気システム、窓開け(建物内部全体に風を通す) |
局所換気 | トイレ、キッチン、風呂、オフィスの給湯室など局所的な空気環境の改善 | 換気扇、窓開け(局所的な換気目的) |
まず、全体換気ですが「建物全体」「フロア全体」「広いオフィススペース全体」というように、広範囲の空気を入れ替えるために行われるものです。全体換気を実施した後は、建物全体で、二酸化炭素などの注意が必要な物質の濃度が低下します。
これに対して局所換気は、「トイレの臭い」「キッチンや給湯室のガス対策」「風呂の湿気取り」など、特定の場所のみで発生する問題を解決するために行われます。例えば、「キッチンコンロの上に設置された換気扇」がよい例です。
換気扇をつけると、ガスコンロ利用中(ガスの燃焼中)に生成された物質を屋外に排出します。しかし換気扇だけで部屋内の全ての空気を入れ替える事はできないので、室内全体の空気環境の改善は期待できません。
全体換気と局所換気は、どちらが良い、悪いではなく、必ずどちらも必要となるものです。その特性を生かして活用しましょう。
さて、第一種換気から第四種換気について、自然換気と機械換気について、そして全体換気と局所換気について解説しました。
大切なことは、それぞれの換気の特性を正しく理解することです。正しく理解したうえで、必要な要件やコストなどを考え、どの換気方法(どの換気システム)を取り入れるかを検討するのがよいでしょう。また、現在の空気環境を診断する測定器を利用して、判断材料とするのも効果的です。
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